エジプトの教育の今

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教育の現状(8/25更新)

3月15日に全国で臨時休校措置が取られました。当初臨時休校期間は2週間の予定でしたが、段階的に延長され、6月の2019/20学校年度終了まで同措置に伴う自宅学習が継続されました。その後、学校再開(次学校年度の開始)は2020年10月中旬とする方針が出されました。

パデコの取り組み(8/25更新)

2016年に締結された、エジプト・日本教育パートナーシップのもと、パデコでは、基礎教育、技術教育のプロジェクトを実施中です。オンライン研修など、遠隔支援で活動を継続中です。


教育の現状(2020/8/25更新)

学校の状況(休業の状況)

3月15日に全国で臨時休校措置が取られました。当初臨時休校期間は2週間の予定でしたが、段階的に延長され、6月の2019/20学校年度終了まで同措置に伴う自宅学習が継続されました。現在、エジプトは夏季休暇中となっています。その後、次学校年度開始を、通常の9月から10月中旬に遅らせ、2020年10月中旬から学校を再開する方針が出されました。

7月10日に行われた、OECD、Harvard Global Education Innovation Initiative、HundrED、世界銀行の共催ウェビナーで、エジプト教育・技術教育省タレック・シャウキー大臣は、政府としての公式決定はまだ先だとしながらも、来学校年度には、小学校3年生までの低学年児童は、毎日全員登校を目指す一方、4年生以上は、自宅でのオンライン学習とクラスの半数程度の分散登校を併用する考えを示しました。

参照:https://www.worldbank.org/en/events/2020/07/09/joint-oecd-harvard-hundred-world-bank-webinar-accelerating-modernization-of-education-in-egypt

政府の対応状況

1. 5月~6月実施の試験への対応

学校種別や学年により次のように異なります。

  • 幼稚園~小学校2年生:3月15日までの学業結果で成績評価をします
  • 小学校3年生~中学校3年生:試験を中止し、プロジェクト学習の提出で代替します
  • 高等学校(普通科)
    1~2年生:タブレットを用いた学年末試験をオンラインで実施します
    3年生:高校卒業資格試験を予定通り実施します(昨年度よりオンラインに移行済み)
  • 技術教育高等学校(日本の高等学校職業学科に相当)
    1~2年生:実習試験以外は課題レポート提出で代替し、実習試験は延期します
    3年生:1ヶ月延期され6月中旬から高校卒業資格試験を実施しする予定でしたが、国内の感染拡大を受け、さらに6月下旬に延期されることになりました(都合1ヵ月半延期:6/3現在)

2. オンライン教育プラットフォームの公開

3月末から4月にかけて、教育・技術教育省は、次のようなオンライン学習用ポータルを順次紹介しています。

子どもたちのいま

エジプトでは、公立校、私立校など学校のタイプにより、カリキュラム、教育の質は異なり、子供たちの社会、経済的階層、子供たちを取り巻く環境も多様です。その為、休校により生じる影響も様々です。

学校タイプ別の状況、子供たちの様子について、「学びの質向上のための環境整備プロジェクト」ナショナルスタッフが聞き取り調査を行いました。

Mr. Mohamed Abdelmeguid(学びの質向上のための環境整備プロジェクト・ナショナルスタッフ)

レポート概要
  • 公立校には、一般的に低所得層の子供たちが通っていますが、休校中の子供たちの学習機会は多くありません。公立校では、教員、生徒共にICTスキルが低く、インターネットへのアクセス、ICT機器を持っていない場合が多いので、オンライン学習を行うことは難しい状況です。また、教員、保護者による子供たちへの学習支援も少なく、休校による最も大きな影響を受けているグループです。
  • 私立校は比較的学費が高く、中間層の子供たちが通っており、公立校に比べ普段から教員、生徒共に学校生活でICTに慣れ親しんでいます。休校中、学校はオンラインでの復習授業が行うなどしています。また、休校期間中、保護者が生徒の学習支援やその他生活支援に多くの時間を割いていることも多いです。
  • 高所得層の子供たちが通う、外国学校のカリキュラムに準拠し、高校卒業時に国際バカロレア資格等が取得できる私立校もあります。そういった学校は普段からオンラインプラットフォーム等を活用しており、休校措置後も、通常のカリキュラムを修了するためにオンライン授業が実施されています。休校による影響が最も小さいグループです。

パデコの取り組み(2020/8/25更新)

プロジェクトの概要

2016年の日エ首脳会談で締結された、エジプト・日本教育パートナーシップ(Egypt-Japan Education Partnership: EJEP)のもと、日本政府は教育分野における包括的な協力を行っています。パデコでは、基礎教育、技術教育のプロジェクトを実施しています。

基礎教育:学びの質向上のための環境整備プロジェクト
特別活動を中心とした日本式教育をエジプトで導入しています。2020年5月現在、約40校の公立エジプト日本学校の幼稚園~小学校2年生を対象として実施しており、対象学年を毎年1学年ずつ上に拡げていく予定です。エジプト日本学校以外の一般公立校への普及も計画中です。

参考:
ODA見える化サイト-学びの質向上のための環境整備プロジェクト
JICA広報誌Mundi(2019年4月号)

技術教育:技術教育改善プロジェクト
エジプトの技術教育(日本の高等学校職業学科に相当)の改善を目的として、日本式技術教育の導入によるモデル開発を行っています。モデル開発は、パイロット4校、新規モデル校1校にて、産業界が求めるソフトスキル、ハードスキルを生徒が習得できるよう、日本式の実習授業の特徴である「繰り返し指導」を導入しています。また、産業界のニーズを理解・指導するために、教員による工場見学など、学校と企業との連携強化を行っています。

 参考:JICA広報誌Mundi (2020年2月号)

プロジェクトの現状

基礎教育
当初計画していた、日本人専門家によるエジプト日本学校への訪問指導と調査は延期・中止となっています。一方、エジプト教育・技術教育省との方針協議はオンライン会議にて頻繁に実施しています。また、指導主事への研修は対面研修からオンライン研修に代替して複数回実施しています。
また、これまで特別活動を導入してきた学校では、生徒が手洗いや毎日の掃除の習慣などを身に付けていたこと、保護者と学校が良好な関係を構築していたことにより、コロナ禍において良い成果が現れていることが、以下の記事で紹介されています。

電子版日本経済新聞に、国際協力機構 北岡理事長の解説記事が掲載されており、エジプトの日本式小学校では子供たちが手洗いを励行し高い評価を得ていることが紹介されました。

日本経済新聞 2020年7月7日版(有料記事)

技術教育
教員への技能研修、学校訪問による実習改善指導を中断し、オンラインでエジプト教育・技術教育省及び各校とコミュニケーションを取り、遠隔での活動計画協議をしています。

遠隔支援の取り組み

基礎教育
オンラインでの研修方法を紹介など、エジプト人がオンラインでの協議や研修を実施するための技術的な支援を行っています。

技術教育
当初予定していた、各校改善に向けた教員とのワークショップをオンラインで実施しました。現在は、日本式モデルの成果を他校に普及するためのウェビナーの開催準備を行っています。また、オンラインでの教員への研修の準備も進めています。

文責:大原理依子(プロジェクト・コンサルタント)


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過去の情報(更新履歴)

2020/7/14
2020/6/24
2020/6/3

2020/5/13


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