世界銀行ウェビナー「新型コロナウイルスの教育への影響と政策対応」報告

解説:大原理依子(コンサルタント)
立命館大学卒業、サセックス大学大学院修了。

5月7日に世界銀行(World Bank)が開催したウェビナー(ライブオンラインセミナー)について報告します。

本イベントにて世界銀行は「新型コロナウイルスパンデミック:教育への影響と政策対応(The COVID-19 Pandemic : Shocks to Education and Policy Responses)」と題した報告書を発表し、UNESCO、UNICEF、Pratham代表、及び複数ヵ国の教育大臣等によるパネルディスカッションが行われました。

参照: World Bank | The COVID-19 Pandemic : Shocks to Education and Policy Responses

3つの段階別の教育政策提言

1. 対処期 

休校期間中の子どもたちの健康と安全を確保し、学習の損失を防ぐ

<具体策>
  • 衛生キャンペーンの実施、給食プログラムの維持やそれに代わる現金給付
  • 公平性に配慮した遠隔教育プログラムの実施
  • 退学を軽減するための、生徒とのコミュニケーションの継続

2. 継続性の管理期

休校措置の解除後、子どもたちが学校に戻ってくるよう働きかけ、学びを回復させる

<具体策>
  • 再入学キャンペーン
  • 基礎的な学力に焦点をあてた教授方法、カリキュラムの実施

3. 改善と促進期

危機への対応を機会とし、より強固で公平な教育を構築する

<具体策>
  • 遠隔教育システムの確立
  • 退学を早期発見する仕組みの構築
  • 適切なレベル、基礎的スキルを教えるための教授方法、カリキュラムの活用
  • 社会的・心理的側面を含む、保護者、教員、生徒を支援する仕組みの構築

参照:World Bank | Policy Notes 

パネリストによる意見の主な内容

オンラインイベントでは、世界銀行の政策提言に関する報告書の発表を受け、現在の各機関、政府の取り組み状況、今後の必要とされる対応について、パネリストによる意見交換が行われました。様々な意見が交わされましたが、以下に主要なポイントを紹介します。

インクルーシブ(社会包摂的)なアプローチ

新型コロナウイルスは、最も弱い立場にある子どもたちに大きな影響を与え、今回の危機以前から存在していた教育格差が拡大することが懸念される。そのため、今回の危機への対応は、インクルーシブな視点を持って実施され、評価されるべきである。

遠隔教育促進の機会

今回の危機的状況は、遠隔教育を促進する機会である。UNICEFは、Microsoftと協同設立した教育プラットフォーム「Learning Passport」を例に、民間企業との連携による可能性を示唆。インターネットへのアクセスは遠隔教育の促進における最大の課題であり、インターネットへのアクセスの拡充が求められる。一方で、テレビやラジオも含む多様なプラットフォームの活用を継続することも必要である。

参照:UNICEF | Press release 

教育における人的要素の重要性

新型コロナウイルス禍の教育危機への対応として、テクノロジーの活用に注目が集まるが、人的な要素の重要性を改めて指摘。休校中の生徒の学習の継続、子どもの健康や安全の確保、学校再開後の学習の損失の回復において、教員は重要な役割を担う。テクノロジーと人的な側面のバランスを取ることが重要である。

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