ウェビナーでの質問への回答 #2

2020年8月17日に開催したウェビナー「コロナで変わる教育協力」では、事前質問含め、多くのご質問が寄せられました。時間の制約で当日取り上げることができなかったご質問の中から、特にウェビナーとの関連性が高い内容についてこちらに回答していきます。



大学生(3~4年生)の方からのご質問

コロナの拡大防止を目的に分散登校などが推奨されており、セミナーの中でも言及されていました。しかし、いくつかの開発途上国の学校では通常時から2部生(午前/午後)を採用している場合もあります。この中でさらに分散登校をすすめれば、教員の負担増加が深刻になるように思います。子どもたちへの教育は大切なものですが、それを支える教員のことは、コロナ下ではどのように配慮されているのでしょうか。

回答者:中野

学校が再開しているラオスの報告です。ラオスは基本的に1部制です。分散登校は、クラスの半分ずつを午前・午後に分け、1年生、3年生、5年生が月・水・金、2年生、4年生が火・木に登校する形で実施されていました。

これにより、午後の授業終了時間が伸びるということはあるかもしれませんが、隔日登校のため、トータルの授業時間は減ります。また基本的には午前・午後同じ授業の繰り返しですので、授業準備の負担が増えることもないと思います。

教育省は分散登校下でのモデル授業計画を学校に通知し、ビデオ教材も作成していましたので、暫定カリキュラムに対応するための教師の負担もそれほど大きくはなかったと思います。分散登校は一ヶ月程度実施され、その後夏期休業となったため、その影響も現時点ではそれほど大きくはありません。

ただし、授業を間引いたことによる学習の遅れをどう取り戻すのかについては、未だ具体的な議論が始まっていません。今後平日の授業時間を増やしたり、休日に補習を行うなどの対策が取られるようであれば、教員の負担は相応に増えるでしょう。

回答者:事務局

(補足)現時点では、2部制をとっている国の学校再開、分散登校に関する具体的な情報を把握していないため推測になりますが、途上国では夜道の通勤・通学のリスクも高いので、授業終了時間を大幅に延長して授業時間を確保するなどの方策は、教員・保護者双方の理解を得るのが難しいように思います。1部制/2部制に関わらず、分散登校により教員の負担が大幅に増加することはないと予想します。

大学院修士の方からのご質問

休校中の教員についてお伺いしたいのですが、収入としては失業状態のようになっているのでしょうか。または、何かしら業務などがあるのでしょうか。

回答者:高橋

カンボジアでは公立校の教員の給料は保証されています。私立校は様々かと思いますが、基本的には保証されていると思われます。一方、授業料が高額な私立校では、オンラインで授業を実施するのであれば授業料を含む校納金の減額を求める訴えが保護者から出されたケースもありました。

回答者:事務局

(補足)公立学校の教員が、学校閉鎖により失業状態になっているという事例は、現時点では把握していません(むしろ学校閉鎖で仕事をしなくても給与が得られる状況を歓迎しているという噂が聞こえたりします)。

サンプルが限られますが(N =82)、弊社が知人らに協力を依頼して実施した保護者へのオンラインアンケートでは、「教師から子どもの様子を確認する連絡が定期的に入る」との回答が、インターナショナルスクールや私立学校に通うご家庭では、国を問わず多かったです。一方、低所得国の公立学校では、「連絡は全くない」という回答が多い傾向にはありました。


今回の回答者

高橋 光治
Principal Consultant at PADECO

カンボジア
教員養成大学設立のための基盤構築プロジェクト・総括

元JICA専門家/JICA企画調査員/青年海外協力隊
ロンドン大修了/神戸大卒・修了

中野 明子
Senior Consultant at PADECO

ラオス
初等教育における算数学習改善プロジェクト・副総括

元The Bridge Fund(米国NPO)/ピースコー
ハーバード大修了/カールトン大卒 

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