バングラデシュの教育の今

教育の現状(2022/3/28更新)

バングラデシュでは2度の休校を経て、2022年2月末より教育機関が再開しました。小学校は3月2日より再開しましたが、合計2年ほど休校していたため、就学児童の減少、学習の遅れなど懸念事項が多々あります。

パデコの取組み(2022/4/22更新)

本プロジェクトが支援した初等カリキュラムが2022年3月末、ようやく初等大衆教育省により承認されました。今後、新カリキュラムに基づき、教科書・教員用指導書が開発されます。


教育の現状(2022/3/28更新)

学校の状況

2度の休校を経て学校再開

先の記事でお伝えしたとおり、バングラデシュの教育機関は、2021年9月より約1年半ぶりに再開しましたが、新型コロナウイルスの感染状況が悪化したため、2022年1月末よりすべての教育機関が再度閉鎖されました。その後、感染状況が落ち着いたため、2022年2月末より、就学前教育、初等教育、中等教育以降の学校が順次再開されています。

小学校は3月2日よりスタートしました。そこで、2022年3月10日、本プロジェクト団員は再開後の学校の様子を調査するため、ダッカ市内にある公立小学校2校を訪問しました。学校によっては、コロナ前と比べ全校児童数が減少しているところもあり、その理由は親の経済状況悪化により、仕事を求めて出身の村や他地域へ引っ越す家族が増えたからとのことでした。

マスクをつけ授業を受ける児童たち(ダッカ市内の公立小学校)

休校中の教師の学習サポート

休校中、子どもたちの学びの機会を保障するため、教師は週に数回Google Meetやfacebookメッセンジャー等を利用したオンライン授業を実施したり、各家庭に学習プリントを配布したりするなど、様々な工夫を凝らしながら対応していたようです。しかし、教師への聞き取りによりますと、オンライン授業を実施しても、児童が視聴できるデバイスを持たないため、クラスの30%ほどしか参加できなかったといいます。参加できた生徒も、保護者にスマートフォン等を借りる必要があるため、教師は保護者が仕事から帰宅した夜7時以降に授業を実施する必要があったとのことでした。

また、オンライン授業はインターネット環境とパソコン・スマートフォンなどのデバイスがあれば良いというわけでなく、特に小学校1~2年生の低学年の場合、傍らで学習をサポートしてくれる人(保護者や年上の兄弟など)がいなければ学習を進めるのは困難と予想されます。保護者への聞き取りでは、仕事や家事で忙しく、子どもの学習を見る暇はなかったとの声も聞かれ、家庭でのサポート体制や教育力の差が、学習格差をますます広げている懸念があります。

2年分の学習をどのように取り戻すのか

バングラデシュの小学校は、計2年ほど休校していたことになります。小学校3年生は、1~2年生で基本的な読み書き・計算を習得しておかなければなりませんが、それを身につけないまま3年生の勉強をしています。教師への聞き取りによりますと、児童は前の学年で習得すべき内容を身につけないまま2つ上の学年の勉強をしているため、高学年になっても基本的な読み書きがままならない児童、しっかりした理解を伴わないまま教師の発言や板書をただ暗記している児童が目立つとのことでした。

小学校5年生の理科の授業

公立小学校の場合、政府により発表された時間割を用いますが、その中に毎日20分間の「補修クラス」が導入されています。この20分間で、教師は休校した2年分の学習の遅れを何とか補おうと日々努力しています。

文責:大橋悠紀(プロジェクト・コンサルタント)

子どもたちのいま

解説ページにバングラデシュ子どもたちの声を掲載しています。

バングラデシュ:子どもたちの今


パデコの取り組み(2022/4/22更新)

本プロジェクトでは、1) 初等カリキュラム改訂、2)教科書・指導書改訂、3)教員養成カリキュラム改訂、4)現職教員のための教員研修支援を行っています。今回、1)初等カリキュラム改訂についてお伝えします。

初等カリキュラムがついに承認されました

本プロジェクトでは、2019年11月より、理数科分野のカリキュラム改訂支援を行ってきました。現行カリキュラムは2012年に国家カリキュラム教科書局(NCTB)が策定したものであり、今回は前回の改訂から約10年後の改訂となります。改訂カリキュラムは、2022年3月末、初等大衆教育省(MoPME)により、ようやく承認されました。

カリキュラム改訂のプロセス

カリキュラムの改訂プロセスは、まず、本プロジェクトの教科専門家が初等カリキュラムを分析し、現行カリキュラムの課題や問題点を明らかにしながら、それらを提言書として取り纏めていきます。その提言書は、バングラデシュ政府側のカリキュラム開発者と共有され、理数科カリキュラム改訂に係る方向性を確認しながら、日バ協働で改訂が進められていきます。

今回の改訂ポイント(理数科)

現行カリキュラムは知識習得に重きが置かれていましたが、今回の改訂カリキュラムでは、21世紀を生きる子供たちに必要な技能や態度、コミュニケーションを通じて他者と共通する目標を達成する技能である「社会的スキル」の育成に重きが置かれています。また、学習内容の系統性・スパイラル性を考慮し、同じ系統の内容を反復学習しながら、発展的な学習に無理なく移行できるよう、各学年の学習内容や配列が見直されています。

新カリキュラムに基づいた教科書・教員用指導書開発

今年(2022年)は、1、2年生の教科書・教員用指導書の改訂作業が計画されており、①教科書・教員用指導書のドラフト作成、②パイロット校での試行、③試行結果に基づく修正、というプロセスを経て、2023年1月より1、2年生の教科書・教員用指導書が全国の小学校へ導入される予定です。そのため、本プロジェクトでは、引き続き、教科書・指導書改訂支援を行っていきます。

公立小学校で学ぶ児童たち(ダッカ市内)

文責:大橋悠紀(プロジェクト・コンサルタント)


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