バングラデシュの教育の今

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教育の現状(8/31更新)

3月16日に休校措置をとり、現在に至ります。今年は5月にラマダン(イスラム教の断食月)とイード(イスラム教の新年)があり、5月30日から6月6日までは夏休みの予定でしたが、休校措置が継続しています。

パデコの取り組み(8/31更新)

政府が実施する「初等教育開発計画」を2004年から支援しています。主に、カリキュラム・教科書の改訂、教員養成、教員研修を支援しています。


教育の現状(2020/8/31更新)

学校の状況(休業の状況)

3月8日にバングラデシュ初の新型コロナウイルス感染者3名が確認され、政府は、3月16日にすべての教育施設を3月31日まで閉校することにしました。同国では、3月26 日から4月4日までの間は,「全ての政府機関は業務を停止する」という措置がとられています。その後数回にわたり休校を延長しています。3月から4月にかけ、春祭り、独立記念日、イースター、バングラ暦新年と元々の祝日が続き、今年は5月にラマダン(イスラム教の断食月)とイード(イスラム教の新年)があったため、当初から5月は1ヶ月間お休みという状況下での休校となりました。

当初の学校暦では、5月30日から6月6日までは夏休みの時期にあたります。こうした長期の休校の子どもたちへ影響を考慮し、4月23日に政府は新型コロナウイルスの状況を見つつ、イード明けの5月26日からの学校再開を検討していることを発表しました。4月27日の新聞報道によると、ハシナ首相は「コロナウイルスの爆発的な流行により、状況が改善されなければ、すべての教育機関は9月まで閉鎖されたままということもあるだろう」と述べています。5月28日に政府は、特別の休日(General holiday)は5月30日までとすると発表し、5月31日から一部の政府機関では業務が再開されています。また同日(5月28日)に政府は、小学校を含む教育機関は6月15日まで休校とすると発表しました。しかしながら6月16日に学校は再開されず、6月15日に政府は再び教育機関の閉鎖を8月6日まで延長しました。7月29日に政府は、国内の新型コロナウイルスのさらなる感染の拡大を抑制することを目的として、8月31日まで全国のすべての教育機関の閉鎖の継続を発表しました。

8月27日に政府は、コウミマドラサ*1を除く全ての教育機関の閉鎖を10月3日まで延長することを発表しました。また政府は8月25日に、今年の初等教育終了試験(PECE: Primary Education Completion Examination)およびその同等の試験であるエプテダイ試験*2の中止を、8月27日に中等教育終了試験(Junior School Certificate (JSC) examination)とその同等の試験である中等ダキール終了試験(Junior Dakhil Certificate (JDC) examinations)*3の中止を発表しました。ハシナ首相は「児童や生徒は、政府が実施する最終試験を受けることなく次の学年に進級する可能性がある」と述べています。

*1コウミマドラサ(Quwmi Madrasas)は教育省からの支援は一切受けずに、アラビア語、ペルシャ語、ウルドゥー語を教授用語とした独自のイスラム教育を、独自のカリキュラムに基づいて行っている。学校の運営は主に村人からの寄付や、中東諸国に移住したバングラデシュ人などからの資金援助で行われている。
*2*3コウミマドラサの終了試験。小学校に相当するエプテダイ(Ebtedayee)、前期・中期中等に相当するダキール(Dakhil)がある。

*1*2*3「バングラデシュ国教育プログラム準備調査報告書(2017), JICA」

バングラデシュの学校暦(3学期制)

  • 1学期:1月から4月
  • 2学期:5月から8月
  • 3学期:9月から12月

*土曜日から木曜日の6日制

 年間の休暇 ー 年間85日の休み(金曜日を除く)

  • 4月春休み(バングラ正月)
  • 6月夏休み(1週間)
  • 10月冬休み(1週間)
  • ラマダン・イード(不定)

政府の対応状況

(1) 教育テレビ
基礎教育、就学前教育、成人識字教育を管轄する初等大衆教育省(Ministry of Primary and Mass Education: MoPME)は、休校の延長が続く4月7日から、バングラデシュの政府所有のテレビチャンネルであるSangsad TVを通じて就学前から小学校5年生までの生徒を対象に教育番組を放送しています。放送後にはYouTubeでも配信されています。
中等教育以降を管轄する教育省(Ministry of Education: MOE)も3月29日から授業の放送を開始しました。初等大衆教育省のウェブサイトに1週間分の放送スケジュールが掲載されています。各学校はこの番組を見るよう生徒に指示を出しています。ただ、バングラデシュ統計局の調査によると、テレビを所有している世帯は全国で50%であり、国のおよそ半分の人達はテレビを観ることできません。それらの多くの人達は恵まれない人々であり、また都市部ではなく農村部に多いことから、休校期間中に生じる教育格差が新たな問題として持ち上がっています。また、7月中旬に発生した洪水の被害により、数万人の生徒が教科書やその他の学習教材を失いました。生徒の多くは、電気の供給が途絶えている避難所(洪水シェルター)にいるため、テレビやインターネットにアクセスできません。そのため、3月17日の新型コロナウイルスの感染拡大の予防的措置による学校の閉鎖以来、生徒らに学習の機会を与えていたテレビやオンラインでの授業に参加できない状況が続いています。

出典:
バングラデシュ初等大衆教育省ウェブサイト(ベンガル語)
教育テレビ のYouTubeチャンネル(ベンガル語)

(2) オンライン教育コンテンツ
初等大衆教育省が実施する第4次初等教育開発計画(2019年~2023年)のパートナーであると同時にバングラデシュ 政府が進める「デジタル・バングラデシュ」を実施する組織である「a2i (Access to Information)」プログラムが、国内のあらゆる教育コンテンツをオンライン上にまとめて共有しています。
初等大衆教育省は5月10日に新型コロナウイルス対策および復旧計画(COVID-19 Response and Recovery Plan -Education Sector-)を発表し、その中で、テレビ、ラジオ、モバイル、オンラインの4つのプラットフォームを通じた教育機会の提供を短期的な支援策として打ち出しています。ただ、現時点ではこの中のテレビによる授業の提供が行われているのみであり、ラジオやオンラインについては実施について検討されているような段階です。テレビでの教育番組は8月も継続して放送されていますが、同じ授業が4、5回再放送されるなど新しい映像コンテンツの不足が課題となっています。
8月にJICAはバングラデシュ政府に対し算数のテレビ向け映像コンテンツの提供を表明し、本プロジェクトがコンテンツの制作を行うことになりました。10月からのテレビ放映を目指して、コンテンツの制作は9月中旬から開始される予定です。

出典:
a2iのウェブサイト
COVID-19 Response and Recovery Plan

子どもたちのいま

解説ページにバングラデシュ子どもたちの声を掲載しています。

バングラデシュ:子どもたちの今


パデコの取り組み(2020/8/3更新)

プロジェクトの概要

パデコは、2004年から現在に至るまで、初等大衆教育省MoPMEが実施する「初等教育開発計画(第1次-第4次:PEDP1-PEDP4)」に第2次から現在実施中の第4次まで、JICAプロジェクトのパートナーとして関わってきています。プロジェクトでは、主に、カリキュラム・教科書の改訂、教員養成、教員研修を支援しています。小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ3(略称はJSP3: Japan Support Program 3)は、「初等理数科における児童の理解度が改善する」という目標を達成するために、MoPME及びDPEを実施責任機関として、2019年4月から開始されました。プロジェクトの支援分野は、「初等理数科カリキュラム及び教材(教科書、教員用指導書、指導・学習教材)の開発支援」と「理数科教育にかかる初等教育ディプロマ(Diploma in Primary Education: DPEd)と継続的職能開発(Continuous Professional Development: CPD)の実施支援」です。プロジェクトの第1期は2020年7月10日に完了し、現在、2020年9月中旬からの第2期の開始に向けて準備が進められています。プロジェクトの第2期では、教科書、教員用指導書の改訂の支援、DPEdやCPDの実施支援だけでなく、算数のテレビ向け映像コンテンツの制作を追加の活動として実施する計画です。

参考:
ODA見える化サイト- 小学校理数科教育強化プロジェクト (2004年~2010年)
ODA見える化サイト- 小学校理数科教育強化計画フェーズ2 (2010年~2018年)
JICA-小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ3 (2019年~2023年)<継続中>

文責:田中香(プリンシパル・コンサルタント)・高木宏美(プロジェクト・コンサルタント)・服部浩昌(シニア・コンサルタント)


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