バングラデシュの教育の今

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教育の現状(2022/1/31更新)

2020年3月より休校が続いていましたが、2021年9月12日、約1年半ぶりに学校が再開しました。感染対策のため、再開後も毎日登校するわけでなく、小学校では学年ごとに曜日を分けて登校し、学校での授業と家庭学習(オンライン授業含む)とのハイブリットで進められてきました。

パデコの取組み(2022/1/31更新)

政府が実施する「初等教育開発計画」を2004年から支援しています。主に、カリキュラム・教科書の改訂、教員養成、教員研修を支援しています。


教育の現状(2022/1/31更新)

学校の状況

1年半ぶりに学校再開

バングラデシュでは2020年3月より休校が続いていましたが、2021年9月12日、約1年半ぶりに学校が再開しました。当日、地元メディアでは、子どもたちが期待に胸を膨らませ登校する姿、学友と抱き合う姿が報道されました。感染対策のため、再開後も毎日登校するわけでなく、小学校では学年ごとに曜日を分けて登校し、学校での授業と家庭学習(オンライン授業含む)とのハイブリットで進められてきました。

オンラインで授業を受ける子どもたち
オンラインで授業を受ける子どもたち

4か月後、再度休校

国内の感染増加を受け、再開からわずか4か月後の2022年1月21日、政府は一部大学を除くすべての教育機関を再度閉鎖することを決定しました。期間は2月6日までの2週間としていますが、開始時期はその時の感染状況により決定するとしています。

再び生徒がいなくなった学校

学習への影響は計り知れず

1年半以上に及ぶ休校は子どもたちの学びにどのような影響を与えているのでしょうか。

国内32県(全64県中)に住む1,806人(8-14歳)の児童・生徒を対象にADBが実施した調査によりますと、コロナ前は1日最低4.5時間確保されていた学習時間は、2021年8月時点で1.6時間に減少したといいます(2020年8月で19分)。政府によるTV授業の放映、教師によるオンライン授業の提供などもされていますが、その恩恵を受けられるのは限られた子どもだけです。上記調査では46%の子どもがテレビやスマートフォン等の機器がないことを理由に、遠隔教育に一度も参加しなかったと回答しています。休校中の教師による連絡やサポートも限定的です。

毎年11月に実施される初等教育修了試験は感染拡大を理由に2年連続中止されました。児童の学力を正確に把握する手段がありませんが、失われた学びは取り返しがつかないほど深刻と予想されます。学校閉鎖が学びに与える影響についてUNICEFは学年が低いほどその影響が大きいとし、低・中所得国の場合、基本的な読み書き能力を身に着けていない子ども(10歳)の割合が、コロナ前と後では53%から70%にまで上がると報告しています。

就学率の低下も懸念

休校が長くなるにつれ、学校に戻らない児童が増加すると予想されます。バングラデシュの初等教育における純就学率は、2020年(休校前)で97.8%(男97.4%、女98.3%)と、60~70%だった1985年後半から飛躍的に改善しましたが、長期の学校閉鎖により就学率は大幅に下がっていると予想されます。休校が長引くと、学校や学習への興味やモチベーションを失う児童が増えていることも報告されています。(ADB 2021)さらに、児童労働、暴力、結婚・妊娠など、学習以外の様々なリスクにさらされる可能性も高くなり、子どもの心身の健康や幸せが脅かされています。

この危機的な状況に対応するため、プロジェクトではより一層政府との連携を強化しながら、様々な活動を進めています。本プロジェクトでは、休校中の児童の学習機会を保証するため、テレビ放映用算数映像授業(小学校1~5年生)の開発支援をしました。現在は、テレビだけでなくYouTubeやfacebookにもアップロードし、より多くの児童が視聴できる方法を模索しています。また、児童だけでなく、教員がいつでもどこでもわかりやすい教材にアクセスできるよう、教員向け指導書のデジタル化、教員の継続的職能開発用のデジタル教材開発なども支援しています。

World Bank “World Bank Open Data (WOBD)”(2022/1/30)
UNICEF “COVID-19: Scale of education loss ‘nearly insurmountable’, warns UNICEF” (2022/1/24)
Dhaka Tribune “Educational institutions closed for two weeks amid Covid surge” (2022/1/21)
UNESCO “The pandemic’s impact on enrolment is yet to unfold”. (2021/12/14)
ADB “ADB Briefs Impact of COVID-19 on Primary School Students in Disadvantaged Areas of Bangladesh” (2021/11)
The Daily Star “No PEC exams this year due to Covid-19”(2021/10/17)
UNESCO “UNESCO warns 117 million students around the world are still out of school” (2021/9/16)
MoPME & DPE “Annual Primary School Census 2020 Final Report”

政府の対応

(1) TV授業の放映

休校期間中、政府は国営放送(Sangsad TV)にて、初等教育と中等教育を対象とした教育プログラムを放送しています。本プロジェクトにおいても、バングラデシュ政府の「新型コロナウイルス感染症対策・復興計画(COVID-19 Response and Recovery Plan)」に基づき、2020年10月より小学校1~5年生のTV放映用の算数映像教材の開発を支援しています。この算数映像教材では現行教科書に沿って授業を展開しているため、休校下でも映像教材と教科書があれば、一緒に学ぶことができるようになっています。

※本プロジェクトが開発支援する算数映像教材は、以下よりご視聴いただけます。
https://www.facebook.com/Rupantar-Kotha-from-Bangladesh-PEDP-IV-314207038668042
(プロジェクトfacebookページ「Rupantar Kotha from Bangladesh PEDP IV」)

本教材は初等教育訓練局(Directorate of Primary Education)と現地プロダクション会社とが共同で開発しており、プロジェクト専門家は撮影する授業のスクリプトや授業案の作成、撮影時の立会いや編集時の助言等を行っています。

プロジェクト現地スタッフからのモニタリングによりますと、算数映像教材含むテレビ授業は国営放送にて放映されているものの、バングラデシュ全土をカバーしているわけでなく、視聴できない地域も一部あるとの報告を受けています。また、放映スケジュールを事前に全ての児童に知らせることが難しく、放送と学習のタイミングを合わせることが困難といった課題も挙げられています。こうした現状を踏まえながら、プロジェクトではより多くの児童・教員に映像教材を届けられるよう、映像教材の様々な活用場面についても検討していく予定にしています。

プロジェクトが開発支援する算数映像教材 小学校5年生「4桁の掛け算」の授業

(2) オンライン授業の様子
休校期間中、独自にオンライン授業を提供している学校もあります。プロジェクト現地スタッフが一部地域で実施した聞き取り調査*5によりますと、教員はGoogle Meetやスマートフォン、facebook messenger等を使い、週3~6回の頻度でオンライン授業を提供しているようです。しかし地方では、安定したインターネットや視聴するデバイスの確保が難しく、オンライン授業を提供することも視聴することもできないといった問題があります。そういった地域では、教員が紙の教材を配布し、回収するといった方法を取っている学校もあります。

*5 バングラデシュの13地区65人の教師への聞き取り。

文責:大橋悠紀(プロジェクト・コンサルタント)

子どもたちのいま

解説ページにバングラデシュ子どもたちの声を掲載しています。

バングラデシュ:子どもたちの今


パデコの取り組み(2022/1/31更新)

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プロジェクトの概要

パデコは、2004年から現在に至るまで、初等大衆教育省MoPMEが実施する「初等教育開発計画(第1次-第4次:PEDP1-PEDP4)」に第2次から現在実施中の第4次まで、JICAプロジェクトのパートナーとして関わってきています。プロジェクトでは、主に、カリキュラム・教科書の改訂、教員養成、教員研修を支援しています。小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ3(略称はJSP3: Japan Support Program 3)は、「初等理数科における児童の理解度が改善する」という目標を達成するために、MoPME及びDPEを実施責任機関として、2019年4月から開始されました。プロジェクトの支援分野は、「初等理数科カリキュラム及び教材(教科書、教員用指導書、指導・学習教材)の開発支援」と「理数科教育にかかる初等教育ディプロマ(Diploma in Primary Education: DPEd)と継続的職能開発(Continuous Professional Development: CPD)の実施支援」です。プロジェクトの第1期は2020年7月10日に完了し、2020年10月より第2期を実施しています。プロジェクトの第2期では、教科書、教員用指導書の改訂の支援、DPEdやCPDの実施支援だけでなく、算数のテレビ向け映像コンテンツの制作を追加の活動として実施しています。

参考:
ODA見える化サイト- 小学校理数科教育強化プロジェクト (2004年~2010年)
ODA見える化サイト- 小学校理数科教育強化計画フェーズ2 (2010年~2018年)
JICA-小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ3 (2019年~2023年)<継続中>

文責:田中香(プリンシパル・コンサルタント)・高木宏美(プロジェクト・コンサルタント)


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