バングラデシュの教育の今

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教育の現状(2021/9/3更新)

2020年3月17日に始まった全校休校措置は、2021年8月末現在も継続しています。

パデコの取り組み(2020/8/31更新)

政府が実施する「初等教育開発計画」を2004年から支援しています。主に、カリキュラム・教科書の改訂、教員養成、教員研修を支援しています。


教育の現状(2021/9/3更新)

学校の状況(休業の状況)

2020年3月17日に始まった全校休校措置は、2021年8月末現在も継続しています。ユネスコのデータによれば、バングラデシュの休校期間はベネズエラと並んで世界で一番長く(8月末時点)、多くの児童・生徒の学びに影響を与えています*1。現地では新型コロナウイルス変異株流行の影響もあり、人の動きを制限するロックダウンがこれまでに複数回実施され、その都度休校期間も延長されてきました。

昨年度(2020年)は、初等教育修了試験(PECE: Primary Education Completion Examination)及びその同等の試験であるエプテダイ試験、中等教育修了試験(Junior School Certificate Examination)とその同等の試験である中等ダキール修了試験が中止され*2、児童・生徒は自動進級することになりました*3。今年度の方針は未だ正式決定されていませんが、初等教育修了試験については、学習内容を絞った短縮カリキュラムを用いて実施されることが検討されています*4

*1 UNESCO “Total duration of school closures”データ(2021年8月末時点)
*2 The Daily Star “No Primary Education Completion, equivalent exams this year” (2020/8/25)
*3 Bangla news “All primary students to be promoted thru assessment” (2020/11/23)
*4 Daily Bangladesh “PEC Daily Bangladesh “PEC exams to be held in class with short syllabus” (2021/8/10)

児童のいない教室

政府の対応状況

(1) TV授業の放映

休校期間中、政府は国営放送(Sangsad TV)にて、初等教育と中等教育を対象とした教育プログラムを放送しています。本プロジェクトにおいても、バングラデシュ政府の「新型コロナウイルス感染症対策・復興計画(COVID-19 Response and Recovery Plan)」に基づき、2020年10月より小学校1~5年生のTV放映用の算数映像教材の開発を支援しています。この算数映像教材では現行教科書に沿って授業を展開しているため、休校下でも映像教材と教科書があれば、一緒に学ぶことができるようになっています。

※本プロジェクトが開発支援する算数映像教材は、以下よりご視聴いただけます。
https://www.facebook.com/Rupantar-Kotha-from-Bangladesh-PEDP-IV-314207038668042
(プロジェクトfacebookページ「Rupantar Kotha from Bangladesh PEDP IV」)

本教材は初等教育訓練局(Directorate of Primary Education)と現地プロダクション会社とが共同で開発しており、プロジェクト専門家は撮影する授業のスクリプトや授業案の作成、撮影時の立会いや編集時の助言等を行っています。

プロジェクト現地スタッフからのモニタリングによりますと、算数映像教材含むテレビ授業は国営放送にて放映されているものの、バングラデシュ全土をカバーしているわけでなく、視聴できない地域も一部あるとの報告を受けています。また、放映スケジュールを事前に全ての児童に知らせることが難しく、放送と学習のタイミングを合わせることが困難といった課題も挙げられています。こうした現状を踏まえながら、プロジェクトではより多くの児童・教員に映像教材を届けられるよう、映像教材の様々な活用場面についても検討していく予定にしています。

プロジェクトが開発支援する算数映像教材 小学校5年生「4桁の掛け算」の授業

(2) オンライン授業の様子
休校期間中、独自にオンライン授業を提供している学校もあります。プロジェクト現地スタッフが一部地域で実施した聞き取り調査*5によりますと、教員はGoogle Meetやスマートフォン、facebook messenger等を使い、週3~6回の頻度でオンライン授業を提供しているようです。しかし地方では、安定したインターネットや視聴するデバイスの確保が難しく、オンライン授業を提供することも視聴することもできないといった問題があります。そういった地域では、教員が紙の教材を配布し、回収するといった方法を取っている学校もあります。

*5 バングラデシュの13地区65人の教師への聞き取り。

(3)学校再開に向けて

2021年8月末現在、休校は9月11日まで継続される予定となっています。教育機関の再開にあたっては、大学から再開し、その後順番に、カレッジ、中等教育、初等教育、就学前教育と続く予定です*6。小学校の再開については、週1~2回の登校から始め、授業は特に重要とみなされる内容に絞った短縮版カリキュラムを用いて行われることが検討されています*7。政府は、8月末より教員は学校に戻り学校再開に向けた準備をするよう指示しています。

*6 Dhaka Tribune “Educational Institutions may reopen in September” (2021/8/9)
*7 Daily Sun “School reopening awaits decision from the highest level, says state minister” (2021/8/24)

学校再開に向けた教職員会議の様子

文責:大橋悠紀(プロジェクト・コンサルタント)

子どもたちのいま

解説ページにバングラデシュ子どもたちの声を掲載しています。

バングラデシュ:子どもたちの今


パデコの取り組み(2020/8/3更新)

プロジェクトの概要

パデコは、2004年から現在に至るまで、初等大衆教育省MoPMEが実施する「初等教育開発計画(第1次-第4次:PEDP1-PEDP4)」に第2次から現在実施中の第4次まで、JICAプロジェクトのパートナーとして関わってきています。プロジェクトでは、主に、カリキュラム・教科書の改訂、教員養成、教員研修を支援しています。小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ3(略称はJSP3: Japan Support Program 3)は、「初等理数科における児童の理解度が改善する」という目標を達成するために、MoPME及びDPEを実施責任機関として、2019年4月から開始されました。プロジェクトの支援分野は、「初等理数科カリキュラム及び教材(教科書、教員用指導書、指導・学習教材)の開発支援」と「理数科教育にかかる初等教育ディプロマ(Diploma in Primary Education: DPEd)と継続的職能開発(Continuous Professional Development: CPD)の実施支援」です。プロジェクトの第1期は2020年7月10日に完了し、現在、2020年9月中旬からの第2期の開始に向けて準備が進められています。プロジェクトの第2期では、教科書、教員用指導書の改訂の支援、DPEdやCPDの実施支援だけでなく、算数のテレビ向け映像コンテンツの制作を追加の活動として実施する計画です。

参考:
ODA見える化サイト- 小学校理数科教育強化プロジェクト (2004年~2010年)
ODA見える化サイト- 小学校理数科教育強化計画フェーズ2 (2010年~2018年)
JICA-小学校理数科教育強化プロジェクトフェーズ3 (2019年~2023年)<継続中>

文責:田中香(プリンシパル・コンサルタント)・高木宏美(プロジェクト・コンサルタント)


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