ミャンマーの教育の今

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教育の現状(6/19更新)

7月21日に高校、8月4日に中学校、8月中旬に小学校の授業を開始するとの日程が発表されました。教育省や学校関係者は開校にむけ、緊張感をもって感染予防策の準備を行っています。

パデコの取り組み(6/19更新)

初等教育カリキュラム改訂プロジェクト業務は在宅勤務にて継続中です。ビデオ会議の環境などを整備し、来年度の新カリキュラム全国導入にむけ急ピッチで作業を進めています。


教育の現状(2020/6/19更新)

学校の状況(休業の状況)

予想されたとおり6月1日の新学年開始は見送られ、7月21日に高校、8月4日に中学校、8月中旬に小学校の授業を開始するとの日程が発表されました。新規コロナ感染者数は概ね毎日一桁で推移しており、外出制限も少しずつ解除されていますが、マスク着用の義務化、外国人の入国制限等、厳しい措置が続く中、教育省や学校関係者は開校にむけ、緊張感をもって感染予防策の準備を行っています。海外での出稼ぎからの帰国者の隔離施設として使用されていた学校の消毒、児童数に応じた通学パターンの設定、感染予防のための物品の配布等が進められています。一方、インターネット接続状況にばらつきがあることや、新カリキュラム導入研修の実施と感染予防措置を講じての新学年開始準備が優先されることから、授業開始前の学習機会の提供は見合わせられています。 

政府の対応状況

4月から続いた移動制限の影響により、通常は前年度の最後に行われる卒業試験結果の採点と集計が中断されていましたが、6月1日に公務員の自宅待機が解かれると同時に再開され、約2週間という異例のスピードで進級の通知が行われた模様です。

同時に、いったんは中止の決定がなされた新カリキュラム導入のための対面研修は、一転、オンライン研修に続いて14日間を6日間に短縮して実施されています。

  • 5月21日:オンライン教材による自習開始
  • 6月5日:オンライン研修開始
  • 6月12~13日:ライブ配信によるToT研修
  • 6月15日~20日:各タウンシップでの対面研修

いずれも直前まで詳細が決まらない中での開催で、どうなることかとハラハラしっぱなしでしたが、課題は残しつつもとにかくやってしまうミャンマーのすごさにはいつもながら脱帽します。

子どもたちのいま

プロジェクトでは新カリキュラムを紹介するウェブサイト上に設置したアンケートにコロナ下の子どもたちの状況について尋ねる設問を追加し、ミャンマーの皆さんの声を募集しています。


パデコの取り組み(2020/6/19更新)

プロジェクトの概要

ミャンマーでは、民主化を支える基礎教育の拡充が重点課題の一つであり、教育省は、学制改革や教員養成の高度化など大規模な教育改革に取り組んでいます。パデコは小学校の新しいカリキュラム全教科の教科書・教師用指導書、評価ツールの開発と全国普及、これらを用いた教員養成校教官などの人材育成を包括的に支援しています。

初等教育カリキュラム改訂プロジェクト(CREATE Project)
公式ウェブサイト
Facebookページ  
Youtube公式チャンネル 

映像ライブラリ:
プロジェクト紹介ビデオ
新カリキュラムテレビCM(和・英 Youtube字幕設定あり)
新カリキュラム広報短編ドラマ(英語字幕) Active編Creative編 
新カリキュラム広報長編ドラマ “Our Hope, Our Future – 私達の希望、そして未来” (日本語字幕)
NHK World/MRTV(英・ミ)”ASEAN Now and Future”から抜粋

参考:
ODA見える化サイトー初等教育カリキュラム改訂プロジェクト
JICAー初等教育カリキュラム改訂プロジェクト
JICA広報誌Mundi特集記事(その1)
JICA広報誌Mundi特集記事(その2)

プロジェクトの現状

カリキュラム開発および、教員養成校カリキュラムに資する教材の開発は、4月から5月の2カ月間、全メンバー在宅勤務にて実施しましたが、6月からは、政府の方針に従い、教育省カウンターパートとプロジェクトスタッフの現地メンバーはプロジェクトオフィス勤務に戻りました。移動制限が緩和されつつあるとはいえ、医療体制が脆弱なミャンマーではコロナ感染は大きなリスクとなります。オフィスの感染予防対策やガイドラインの作成、勤怠管理の例外措置の導入等、安全に業務にあたってもらうために考えうる限りの方策を立て、リスク低減にあたっています。

新カリキュラム導入のためのオンライン研修中には、教育省が用意したオンラインプラットフォーム(MDEP: Myanmar Digital Education Platform)や、その上に設けられたDBE Boxサイトに、プロジェクトにて開発した教科書および指導書、1月から2月にプロジェクトが協力して実施した中央研修の映像やプロジェクトが制作した授業映像が掲載されました。対面研修のトレーナーのための研修はプロジェクトオフィスから配信され、研修モジュールなどの教材の配布もプロジェクトにて行いました。きわめて限られた準備期間でしたが、なんとかタウンシップごとの研修も開催されている様子が、現地のテレビ番組でも連日放映されています。プロジェクトの専門家も日夜遠隔サポートを行いましたが、感染対策を講じながら全国研修を実現させた教育省と学校関係者、プロジェクトのカウンターパートとスタッフのがんばりにはほんとうに感謝です。

学校再開の時期や通学パターンごとの授業日数が明らかになったことから、教育省の要請を受け、コロナ下の授業時数の減少や感染予防対策をふまえたカリキュラムの調整を実施中です。教科書や教師用指導書に復習や発展教材を含めている教科もありますが、本来カリキュラムに削ってよい部分などありません。また、カリキュラムにおけるすべての学習は授業を中心に構成されています。その中で、授業時間が減るから、感染リスクがあるから、という理由で、見合わせたり自宅学習に切り替えたりする作業は、カリキュラム開発者にとって身を切る思いに違いありません。それでも、まずは子ども達を守るため、そして系統性の保たれた学びを継続させるため、制約のある中でのベストを提供していきたいと思います。コロナ下の学びをどう実現していくのか、感染対策を講じながらの児童中心教育について、わかりやすく伝えるビデオも制作中です。

新しい新カリキュラム広報番組が放映開始されました!
このビデオに登場するような授業はしばらくできませんが、新カリキュラムのコンセプトは変わりません。多くの方々により深くご理解いただく助けになることを願っています。

遠隔教育の支援

教育省は閉校中の遠隔教育や系統だった学習指導は行わないとの意向を表明していますが、今の状況が8月中旬の開校まで続くと、約半年の間、子ども達は学習機会のないまますごすことになります。都会の裕福な家庭の子ども達は私立校や民間教育機関のサービスを受け、インターネットの恩恵を享受できる一方で、僻地や貧困家庭の子ども達の中には、家事、家業、労働に駆り出され、新学年に学校に戻れないケースも出てくるでしょう。学校に通えるとしても、6カ月間の学習状況の差は、新学年の学習に大きく影響してくるはずです。プロジェクトでは他ドナーとも協力して、学校再開前の自宅学習への協力方法を検討中です。

その他特筆すべきこと

長い暑季休暇がいつもよりさらに長くなった、というのが、ミャンマーの多くの人の肌感覚なのかもしれません。しかし、コロナのような非常事態にあって公教育を「全員に同じ機会を提供できないから誰にも提供しない」と考えると、無償教育以外で学習機会を得られるかどうかに依存することになり、結果としてかえって格差の拡大を招きます。日本では自治体レベルで対応に差が生じ国内の格差が生まれていますが、途上国では国家レベルで差が生じ、国際的な格差につながっていくことが懸念されます。非常時こそ、最低限を守った上で使えるものは使う、安易に昔のやり方に戻るのではなく目指すところの本質を見失わないことが大切です。日本が今まさに直面している困難は、そのまま途上国で活きる知恵になります。ミャンマーの子ども達の学びが一日も早く再開するために、そして、真の学びが継続するために、できる限りのサポートをしていきたいと思います。

文責:宮原光(プロジェクト・コンサルタント)


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