エジプトの教育の今

教育の現状(2021/9/6更新)

2020年3月15日から2021年9月現在まで、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のピークは3回あり、その都度臨時休校措置などが全国で取られました。夏季休暇明けの翌年度学校開校時期は通常9月中旬ですが、2021年度は約3週間遅れの2021年10月9日から開校を予定してします。

パデコの取り組み(2021/9/6更新)

2016年に締結された、エジプト・日本教育パートナーシップのもと、パデコでは、基礎教育、技術教育のプロジェクトを実施中です。


教育の現状(2021/9/6更新)

学校の状況(休業の状況)

2020年3月15日から2021年9月現在まで、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のピークは3回あり、その都度臨時休校措置などが全国で取られました。夏季休暇明けの翌年度学校開校時期は通常9月中旬ですが、2021年度は約3週間遅れの2021年10月9日から開校を予定してします。

政府の対応状況

臨時休校期間に政府は次のような対応をしました。

1. 2020年5月~6月実施の学力試験への対応

  • 幼稚園~中学校:学力試験を中止し、学年によって代替措置を取りました。
    • 小学校2年生まで: 2020年3月15日までの学業で成績評価をしました。
    • 中学校3年生まで:自由研究を課しました。
  • 高等学校(普通科):
    • 1・2年生:タブレットを用いたオンライン試験に移行しました。
  • 技術教育高等学校(日本の高等学校職業学科に相当)
    • 1・2年生:実習試験以外は課題レポート提出し、実習試験は延期
    • 3年生:時期をずらして試験を実施

なお、高等学校普通科3年生は、2019年度よりオンライン試験導入済みだったので影響はありませんでした。

2. オンライン教育プラットフォームの整備

教育・技術教育省はこれまで、次の3種のオンライン学習用ポータルを提供し、教職員への利用研修などと併せて導入してきました。

3. 教育関係者を対象とした新型コロナウイルスワクチン接種

私立を含む教育機関関係者全員を対象とする新型コロナウイルスワクチン職域接種を新学校年度開始前の2021年9月7月までに終えることを目指すと発表しました。ワクチン未接種者は学校へ立ち入りできなくなる可能性が出てきています。

出典:
All teachers, staff will be allowed into schools only after getting Covid-19 vaccine
7 September deadline for school staffers to register for COVID vaccine: Education ministry

子どもたちのいま

社会階層、経済状況により通う学校がエジプトでは異なり、誰でも通える公立校と裕福な層が通う私立学校では教育の内容・質は大きく異なります。休校により生じる影響も公立・私立などの学校タイプ別で大きく異なります。学校タイプ別の子供たちの様子について、「学びの質向上のための環境整備プロジェクト」ナショナルスタッフが聞き取り調査を行いました。

Mr. Mohamed Abdelmeguid(学びの質向上のための環境整備プロジェクト・ナショナルスタッフ)

レポート概要
  • 公立校には、一般的に低所得層の子供たちが通っていますが、休校中の子供たちの学習機会は多くありません。公立校では、教員、生徒共にICTスキルが低く、インターネットへのアクセス、ICT機器を持っていない場合が多いので、オンライン学習を行うことは難しい状況です。また、教員、保護者による子供たちへの学習支援も少なく、休校による最も大きな影響を受けているグループです。
  • 私立校は比較的学費が高く、中間層の子供たちが通っており、公立校に比べ普段から教員、生徒共に学校生活でICTに慣れ親しんでいます。休校中、学校はオンラインでの復習授業が行うなどしています。また、休校期間中、保護者が生徒の学習支援やその他生活支援に多くの時間を割いていることも多いです。
  • 高所得層の子供たちが通う、外国学校のカリキュラムに準拠し、高校卒業時に国際バカロレア資格等が取得できる私立校もあります。そういった学校は普段からオンラインプラットフォーム等を活用しており、休校措置後も、通常のカリキュラムを修了するためにオンライン授業が実施されています。休校による影響が最も小さいグループです。

パデコの取り組み(2021/9/6更新)

プロジェクトの概要

2016年の日エ首脳会談で締結された、エジプト・日本教育パートナーシップ(Egypt-Japan Education Partnership: EJEP)のもと、日本政府は教育分野における包括的な協力を行っています。パデコでは、基礎教育、技術教育のプロジェクトを実施しています。

基礎教育:学びの質向上のための環境整備プロジェクト
特別活動を中心とした日本式教育をエジプトで導入しています。2021年5月時点で、43校の公立エジプト日本学校の幼稚園~小学校3年生を対象として実施しており、対象学年を毎年1学年ずつ上に拡げていく予定です。

参考:
ODA見える化サイト-学びの質向上のための環境整備プロジェクト
JICA広報誌Mundi(2019年4月号)

技術教育:技術教育改善プロジェクト

エジプトの技術教育(日本の高等学校職業学科に相当)の改善を目的として、日本式技術教育の導入によるモデル開発を行っています。モデル開発は、パイロット4校、新規モデル校2校にて、産業界が求めるソフトスキル、ハードスキルを生徒が習得できるよう、日本式の実習授業の特徴である「繰り返し指導」を導入しています。また、産業界のニーズを理解・指導するために、教員による工場見学など、学校と企業との連携強化を行っています。

参考:JICA広報誌Mundi (2020年2月号)

プロジェクトの現状

基礎教育

新型コロナウイルス感染症流行以降、日本人専門家によるエジプトでの業務中断となっていましたが、2021年2月より再開しました。
2021年8月22日、23日には、これまでのエジプトでの日本式教育の成果報告を目的とした国際オンラインセミナー及びエジプト国内の関係者を対象とした国内オンラインセミナーを開催しました。

Online Seminar: COVID-19 AND THE POTENTIAL OF THE HOLISTIC EDUCATION MODEL

2021年8月29日からは、エジプト日本学校の管理職に向けた研修を行っています。

特別活動を導入してきた学校では、生徒が手洗いや毎日の掃除の習慣などを身に付けていたこと、保護者と学校が良好な関係を構築していたことにより、コロナ禍において良い成果が現れていることが、以下の記事で紹介されています。

また、電子版日本経済新聞に国際協力機構北岡理事長の解説記事が掲載され、エジプトの日本式小学校で子供たちが手洗いを励行し、高い評価を得ていることが紹介されました。

日本経済新聞 2020年7月7日版(有料記事)

2021年10月からプロジェクトはフェーズ2に入ります。その中で、対象学校の拡大を計画しています。

技術教育
新型コロナウイルス感染症の影響により2020年3月から日本人専門家の現地渡航を中断し、オンライン会議アプリを用いてた教員技能研修、成果普及セミナーを実施しました。2021年2月から日本人専門家の現地活動を再開し、2021年10月の新学校年度開校に向け、パイロット校教員対象の実習改善ガイドライン研修や技能研修(機械、電気、服飾)を実施しています。

遠隔支援の取り組み

基礎教育

オンラインでの研修方法を紹介など、エジプト人がオンラインでの協議や研修を実施するための技術的な支援を行っています。

技術教育

遠隔での技能研修、プロジェクト活動普及ウェビナーを実施しています。

文責:大原理依子(プロジェクト・コンサルタント)・岸本紗希(コンサルタント/アナリスト)


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現地の報道


過去の情報(更新履歴)

2020/8/25
2020/7/14
2020/6/24
2020/6/3

2020/5/13


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