
2021年4月22日から休校となりましたが、その後5月に小学校、中学校、高等学校の最終学年に限り(卒業試験があるため)再開しました。その他、首都ビエンチャンを除く地域の一部の学校では 5月に一部の学年のクラスを短期間再開しました。

2016年から基礎教育の技術協力プロジェクトを実施しており、初等算数教育の質の改善に取り組んでいます。パデコは現地政府と密に連絡をとりつつ、遠隔で技術指導を行っています。
教育の現状(2021/9/6更新)
ラオスの現状
昨年から始まった新型コロナウィルスの流行ですが、ラオスは2021年4月までは感染拡大を抑えることができていましたが、2021年4月にタイからの入国者により市中感染が広まりました。現在市中感染は抑えられてきていますが、タイからの帰国労働者の感染により感染者数は増えています。政府は県や地域ごとのロックダウンを行い、市中感染を抑える対策を取っており、現地の生活は制限も緩くなっていて日常が戻りつつあるのが現状です。
学校の状況(休業の状況)
ラオスでは通常9月~5月が学校の年度となっています。しかし、新型コロナウイルスの流行に伴い2020年3月30日から5月3日まで全国的にロックダウンが行われ、全国の公立・私立教育機関は一斉休校となりました。2020年5月からは学校が徐々に再開され、新年度は2020年9月から始まりました。しかし、今年4月から感染率が再び 急速に増加し、2021年4月22日から現在まで再度ロックダウンが実施されています(ロックダウンは現在の時点で9月2日まで延長)。学校も4月22日から休校となりましたが、その後5月に小学校、中学校、高等学校の最終学年に限り(卒業試験があるため)再開しました。その他、首都ビエンチャンを除く地域の一部の学校では 5月に一部の学年のクラスを短期間再開しました。
政府の対応状況
コロナ感染拡大による休校措置にともなって、ラオス教育スポーツ省は子どもたちの学びをとめないよう迅速に対策を打ち出していました。
① 国営テレビ放送による遠隔授業の取り組み
4月より、ラオス教育スポーツ省は国営放送局や衛星放送を使って毎日テレビ授業を行っていました。この授業は教育スポーツ省のウェブサイトやYouTubeチャンネル、Facebookのedu-sport tv onlineページよりライブ配信もされており、パソコン・タブレット・スマートフォンなどのデジタル機器を通じていつでも動画を観ることができます。学校再開後も、教育スポーツ省は引き続き遠隔教育の開発に尽力していくことを表明しています。
② 2021年4月発令ロックダウン以降のスケジュール
以下のスケジュールにて学校は再開しています。
初等教育5年生
- 4月中旬~ロックダウンにより休校
- 5月下旬:ビエンチャン市内以外は学校再開
- 6月下旬~7月上旬:初等教育卒業試験
初等教育1~4年生
- 4月中旬~ロックダウンにより休校
- 6月下旬~ビエンチャン市内以外は分散登校などの感染防止対策をとりつつ再開
※学期末試験は中止。休校前までの成績を学期末試験の代わりとし、進級可否の指標とする。
子どもたちのいま
*情報収集準備中*

パデコの取り組み(2020/8/12更新)
プロジェクトの概要
ラオス政府は2020年までに後期開発途上国からの脱却を目標としており、初等教育の普及と質の向上を最優先の課題としています。パデコは2016年から基礎教育の技術協力プロジェクトを実施しており、初等算数教育の質の改善に取り組んでいます(2022年終了予定)。
プロジェクトは主に以下の3つの活動を行い、初等教育の算数学習の改善を目指しています。
① 初等教育の算数教科書・指導書開発
② 教員養成校の算数カリキュラム改訂・教材開発
③ 現職教員の研修
世界的にも評価の高い日本の算数の教科書や教え方をベースに、「先生が一方的に教える」のではなく、「生徒が自ら考えて解く」問題解決型授業をラオスにも広めるために、新しい教科書を開発し、開発された教科書を使って教えられる先生を増やすために研修を実施しています。
参考:
ODA見える化サイト-初等教育における算数学習改善プロジェクト
Facebook-The Project for Improving Teaching and Learning Mathematics
プロジェクトの現状
プロジェクトでは5月に小学校での学習状況について、郡や地区から情報を収集しました。調査時点では全ての郡で小学校は休校となっており、いくつかの郡では教員がWhatsApp やFacebook Messenger等オンラインチャットアプリを通して宿題を出しているとの回答がありました。また、教員がFacebook を利用し授業内容をビデオに録画したものを生徒の親と共有している学校もありました。近年のラオスでは都市部を中心に大多数の家庭でスマートフォンの利用が広く普及しているため、SNSを上手く使いこなして教員と保護者がコミュニケーションをとる様子が見られます。一方、インターネットを用いた家庭学習のための上記の様な対応を取るのは容易ではなく、休校したまま学習が完全にストップしている地域も見受けられます。SNSを通じての学習にも限りがあり、インターネットへの接続環境に関しても地域、家庭ごとに格差があるため、休校の影響で失われている学びをどう取り戻すかの検討が今後必要不可欠となっています。
また、通常学校年度の最後(5月)にはパイロット4県の学習状況についてモニタリングや調査活動を行う必要があり、例年は日本人専門家、スタッフ、カウンターパートが対象郡の学校を訪れ調査を行います。 5月からラオス政府は移動制限を一部解除し、ワクチン接種が完了した人に限り郡間を移動できるようになりました。しかし、プロジェクトメンバーを他の郡に送ることにはコロナ感染リスクの観点から未だ懸念が大きいため、今回は教員養成校(Teacher Training College:TTC)の教官を対象にオンラインでの オリエンテーションを実施し、彼らにモニタリングと調査活動を代理で行ってもらいました。
遠隔支援の取り組み
COVID-19感染予防対策を取りつつ、教育スポーツ省や教育機関は通常運用体制に徐々に戻ってきています(感染が再び拡大している一部地域の運用体制は県・郡ごとに異なる可能性有)。2021年1月から、日本人専門家が再びラオスで活動することが可能となりました。ただし、渡航制限(ラオスへの入国許可の取得義務や一度に渡航できるプロジェクトメンバーの数の制限)があるため、チームメンバー全員が以前のように現地で活動できるわけではありません。そのため、現地にいるメンバーと日本からオンラインで参加するメンバーでのハイブリッドミーティング/トレーニングを実施しました。また、感染の状況はいつでも変化しうるため日本人専門家の渡航が突然不可能になることも有り得ます。日本人専門家の不在を想定し、感染状況に関わらず質の高い技術支援を継続できるよう、引き続き遠隔での指導方法について検討していきます。
文責:西原梨緒(コンサルタント/アナリスト)・中野明子(シニア・コンサルタント)