解説:北館尚子(シニア・コンサルタント)
一橋大学卒業、ハーバード大学大学院修了。元UNESCO(国連教育科学文化機関)職員。
世界の学校閉鎖の状況(2020年5月4日時点)
全国規模で学校閉鎖を実施している国の数:177カ国
影響を受けている学習者数: 1,268,164,088人
影響を受けている学習者の割合: 72.4%
殆どの国で感染防止のための学校閉鎖は突然に決定され、学校も家庭もそして社会全体においても十分な準備が整わないまま休校対応に追われ、子供たちの教育環境が激変する事態に陥っています。
参照: UNESCO | COVID-19 Impact on Education
世界の家庭でのオンライン学習の環境(2020年5月4日時点)
家庭でコンピューターが利用出来ない子供の数: 826,000,000人
家庭でコンピューターが利用出来ない子供の割合: 約半数
家庭でインターネットが利用出来ない子供の数: 706,000,000人
家庭インターネットが利用出来ない子供の割合: 43%
多くの国や学校で、インターネット等を利用した遠隔学習の導入が試みられる一方で、UNESCOが4月21日に発表した調査結果によれば、世界中で学校閉鎖の影響で学校に通えなくなった子供たちの約半数にあたる8億2千百万人が自宅にコンピューターが無く、43%にあたる7億6百万人は自宅にインターネット環境が無い状況であることが指摘されました。「デジタル格差」がもたらす子供達の今及び将来の学習機会の不平等を解消することが喫緊の課題となっています。
参照: UNESCO | Startling digital divides in distance learning emerge
世界の学校閉鎖による給食への影響(2020年5月4日時点)
学校閉鎖(地域レベルも含む)を実施している国の数: 197 カ国
給食が食べられなくなった生徒数: 368,000,000人
学校閉鎖がもたらす影響は、単に学習が中断されることに留まりません。世界中には学校で提供される給食が1日のうちで唯一のきちんと栄養補給が出来る食事である子供たちが大勢いますが、国連世界食糧計画(WFP)による最新のデータによると、現在3億6千8百万人以上の生徒が、学校閉鎖のために給食が食べられなくなっています。
参照: WFP | Global Monitoring of School Meals During COVID-19 School Closures
新型コロナウイルスの子供への影響
国連は、4月16日に発表した新型コロナウイルスが子供に及ぼす影響に関する報告書の中で、以下の点について警鐘を鳴らしています。
- 貧困への転落の恐れ:今年中に新たに4千2百万人から6千6百万人の子供たちが貧困に陥る恐れがある。
- 学習危機の悪化:学校閉鎖措置によって15億人の子供と若者が学校で学ぶことが出来なくなっている中、全体の3分の2以上の国でオンライン等での遠隔教育の取り組みを導入しているが、低所得国の間では遠隔教育の導入は30%に留まっており、学習機会の格差が増大する恐れがある。
- 子供の生存と健康への脅威: 世界的な経済不況の影響による家庭の経済的困窮が原因で、今年中に数十万人の子供たちが死亡する恐れがある。
- 子供の安全に対するリスク増大:都市封鎖が行われ家に閉じ込められた子供たちが、暴力・虐待や搾取的状況に瀕するリスクが増加する恐れがある。
参照: UN | Policy Brief: The Impact of COVID-19 on children