教育の現状(2022/2/16更新)
学校の状況
新型コロナウイルス感染症拡大による2020年3月からの休校措置は、2021年1月に取りやめとなり、学校が再開されました。しかし多くの児童は学校には戻っていません。
リベリアの学校年度は通常9月開始ですが、2020/21学校年度は2か月遅れの11月に開始されました(※1)。その開始1週間後の11/9~10に、筆者がいくつかの小学校を訪問しました。教室にいる児童はまばらで、多くの机・椅子が空席でした。児童が学校に来なくなっている主な原因は保護者の経済状況悪化です。公立小学校では学費は無料ですが、校内備品等の購入のため新学期登録料(約760円(※2))を納める必要があります。これを収められない保護者が増えていると学校関係者が話してくれました。就学児童数が年々減っている学校もありました。
(※1)2020年3月から2020年12月までの休校措置により、2020/21学校年度を通常より遅らせて終了させた結果、2021/22学校年度の開始時期を遅らせることになりました。
(※2)1人あたりの国民総所得は、日本が41,513ドル(2021)でリベリアが610ドル(2018)で68倍の差があるため、日本の感覚だと53,000円程度です。
2014~15年のエボラウイルス病大流行時に行った半年間の休校明け後には、児童労働、貧困、結婚・妊娠等さまざまな理由で学校に戻れない子どもが大勢いました。開発ドナーの支援のもと、リベリア政府は就学率改善に向けた取組をしてきましたが、今回の休校でも就学率は再度下がっていると予想されます。

リベリアの教育
2度の内戦とエボラウイルス病流行を経験したリベリアでは、就学年齢で学校教育を受けられなかった若者が多くいます。現在も、学校に通っていない不就学の問題と、正規の学齢より遅れて就学する学齢超過の問題は深刻です。小学校学齢期の不就学児童は2017年には16万人に上りました。これは就学児童全体の22%にあたります。また、学校に通っていても、約40%の児童が3歳~6歳学齢超過しています。筆者が訪問した小学校でも、小学校1年生のクラスに15歳の生徒が在籍していました。

不就学や学齢超過の理由には、貧困が一番にあげられます。就学には新学期登録料のほか、制服や靴、文房具等も必要となりますが、全ての家庭がこれらを負担できるわけではありません。学校が家から遠い、もしくは通学路の未整備などにより、親が子どもを学校に通わせたがらないということもあります。学齢超過での就学は、正規の学齢での就学より文字の読み書きを身に着けづらく、不登校や退学に繋がりやすいという報告があります。そのため、学齢での就学の重要性を保護者や地域住民に理解してもらい、学校と地域が協力して子どもを学齢で入学させ、就学を継続させることが重要と考えられています。

政府の対応状況
休校中、教育省はラジオやオンラインを通して授業を提供していたほか、紙ベースの教材も配布していました。特にラジオでは、政府はドナーの支援を受けて、就学前から高校生を対象とした教育プログラムを放送しており、100万人近い子どもたちが利益を受けたと言われています。
学校再開にあたっては、教育省はドナーの協力の下、新型コロナウイルス感染対策ガイドラインや啓発ポスターと共に、手洗い用石鹸、フェイスマスク、衛生管理用品を全ての学校に配布しました。また、休校中あらゆる影響を受けた子どもたちをケアするため、約4,400人の公立学校の教員・管理職を対象に、心理社会的なサポートや児童中心の教授法に関する教員研修が実施されました。
参考文献:
Develop Africa, “Liberian Students Back in School”
The New Dawn, “Govt. announces adjustments in the school calendar”
UNICEF, “Country Office Annual Report 2020”
UNICEF, “UNICEF Liberia COVID-19 Situation Report” (2020/6/15)
World Bank “World Bank Open Data”
Ministry of Education “Liberia Education Sector Analysis” (November 2016)
Ministry of Education “Getting to Best Education Sector Plan 2017-2021” (December 2016)
文責:大橋 悠紀(プロジェクト・コンサルタント)